第1課題 「私の好きな住宅 ―その解釈」講評会 優秀作品講評抜粋
4月19日 15:00〜17:00

永沢ゆき/ファンズワース邸/ミース・ファン・デル・ローエ
外部の風景を壁紙として使っているところに魅力を感じた。中を抜いたのはミースの空間の軽さ=無柱空間を表現。ミースの多用したクロムメッキの表現を外部の風景として使った。
どうしてこの住宅がガラスの家と呼ばれるのかがよくわかる模型だった。(加茂)
こういう地下空間があってもいいと思うくらいモノとして完成している。(平本)
持ち上げたときに一種の驚きがある。ファンズワースがちょっと浮いているのにつながるような感じ。覗きたいけど覗けないじらされ具合がよい。プレゼンテーションがよく、納得できた。(古谷)
シュタイン邸の小林君の「〜だったそうなので」と対照的。小林君は手軽な情報でできている気がする。永沢さんは自分で考えた言葉に説得力があった。ミースは外の風景を外部ではなく内部としてとらえた。壁紙というのはあっていると思う。(萩原)

佐藤成海/シュレーダー邸/リートフェルト
モンドリアンの絵が立体化したような異様さが気に入った。リートフェルトの弟のベルリンチェアと構成が似ていると感じた。イスは小さな家である様な気がした。ヴォイドを様々な色のヴォリュームで表現した。
スペース自体が集まってできている感じが表現されている。(古谷)
家具と住宅という論理が緻密に現れている。(加茂)
ヴォイドを表現するのは難しい。チャレンジしたのはよかった。(萩原)
空間をつくるものがエレメントになっている。(平本)

森本貴洋/シュレーダー邸/リートフェルト
色と直線だけでつくられた住宅なので、外観だけつくった。
パーツにばらしてもう一度組み立て直した感じが土台から伝わる。いくら積んでも積み残すところがあって、残ったパーツが土台に散らばっているのではないか。積みきれなかった部分がこの住宅の開口になっている雰囲気がある。(古谷)
素直に緻密に作っている。こういった作業はとても大切。土台のグラフィックに、例えば色の比率を表現するなどの意味があるとよかった。少し恣意的すぎるところが残念。(萩原)

広瀬拓哉/フィッシャー邸/ルイス・カーン
正方形からはじめる概念が好き。45度ずらして配置していて光の入り方が好き。時間帯によって変わる光を抽象化して表現した。
内部と外部を白と黒を割り当てて表現したのが良かった。(古谷)
白黒だけではなくて暗がりの部分を発見してグレーにしたのがさらによかった。フィッシャー邸が庭に影を落とす、その光景も素晴らしいのにそれが考えられていないのが残念。模型の方向が北向きにそろっていない。定点観測と同じなのに表現が解りにくい。ルールが少しおかしい。(萩原)
影が巧妙。(加茂)
考え抜かれた表現のエスプリ。(平本)

小森陽子/夏の家/アスプルンド
厨房からリビングまでまっすぐ視線が伸びて、その窓の先に見えるものが何なのか気になった。真ん中に水平線が見えるのを表したかった。アスプルンドの人生で最後が一番安らかだったのではないかということを模型で表現した。
話を聞いて感動した。作家の人生を表現した所がよい。(萩原)
もうちょっと敷地を長くしたほうが彼女のいっていたことが表現されたと思う。(加茂)
男性の言葉が稚拙なのに対して女性は知的な傾向がある。この模型は緑をバックにすると非常に美しい。(古谷)

浅野久美子/フランシスコ・ギラルディ邸/ルイス・バラガン
色が特徴的な住宅。メキシコにあって初めて色が映えると思ったのであえて色は表現しなかった。微妙な透明感を表現するために半透明な素材を使った。
色をあえて抜いて表現したことでそこから何か気づいてほしかった。(平本)
色を白くしただけではないものがあると思った。彼女なりの感覚が入ってこの建築のベースがすばらしいものであるということがわかった。(萩原)

村山景太/反住器/毛綱毅曠
一番小さい入れ子が家具で、それだけでは空間がない。そこに2つ目の入れ子を被せることで部屋、つまり内と外ができる。そして、一番大きい入れ子を被せると、それまで外であった空間が内になり、空間が反転し、1つの住宅になる。それを表現するために最初は3つの入れ子をバラバラに配置した。
入れ子によって空間が反転していく感じが模型とプレゼンでよくわかった。(加茂)
これまであまりよく理解できなかったこの住宅が、この作品を見ることですごくよい建築だと思った。模型で解剖できたのがよかった。(平本)
模型とプレゼンの手際の良さでストレートに伝わった。グラフィックデザインとともに完成している。表現のセンスがある。(古谷)

星野裕美/私の家/清家清
一室空間で、しつらえによって生活の変化に対応した空間をつくっている。「私の家」も行事や生活に合わせてしつらえをして、庭の自然とともにころもがえする住宅。
よくみると非常によくできている。畳や本の表現がこの家の持っている心地よいスケール感をうまく表現している。凄く丁寧。(古谷)
カーテンが揺れている感じが動きがあってよい。(萩原)

入江貴之/VOXEL HOUSE/べラ・ジュン+藤村龍至
雑居ビルの一室を住居にしたもの。何も無い空間に本棚を持ち込んで、生活をつくりだしたところが好き。いつでも交換可能なことを表現するため引き出しの模型にした。
新しいかたちのインフィルの単位を見つけたという感じが表現されていて面白い。(平本)
精巧に空間ができている。ダイナミズムを持ったものが都市に集積しているイメージができている。(加茂)
引き出したら本棚だけになっている方が面白かった。(古谷)

伊藤華絵/最小限住宅/増沢洵
約6×6mの小さい建築だが、敷地は200坪で建築に比べて広い。戦後の貧しい環境の中で、住宅金融公庫からの融資を受けられる最大限のスペースを使った住宅である。戦後の貧しい状況を表現するため周辺は段ボールであえてみすぼらしくつくった。
雑誌に載っている写真を見る限りでは非常に小さく見えるが、模型でみると周りの状況と建築の大きさがうまく表現できている。(加茂)

中西智也/ドラム缶の家/川合健二
力強さを持った住宅である。ぼつんとひとつおかれている孤立の仕方に自由さを感じた。川合健二は鉄を自然素材としてとらえているので、住宅だけではなく敷地も鉄板で表現した。
1つの世界観ができているのは成功している。(平本)
今後が楽しみな精巧さ。ベースには砂などをひいたほうがよかったのでは。(加茂)
川合さんの都市居住に対する拒絶を表現していないのではないか。オブジェとしてはいいが、もうひとひねりほしかった。(萩原)
川合健二のものよりもオブジェになっている。(古谷)

山田宮土理/伊藤邸/原広司
箱を外壁とみなして有機孔を窓と同じ位置に開けた。伊藤邸は傘のような構造が特徴的で、その屋根の下で展開される内部空間を外壁とみなした箱でしまいこむことでこの住宅の持っている内部の積極的に閉ざされている雰囲気を表現した。
特徴的な屋根だけつくっているが、箱の表現が少しやりすぎなのでは。きわどいところ。(古谷)
穴から覗くと全く別のきれいなものが見える気がする。(加茂)
第2課題出題「都市の残余空間に住むことを考える。」
出題:加茂紀和子
都市の残余空間を見つけてください。その空間の潜在性を分析し、そこに住むための建築をつくります。残余空間の規模や立地、状況などは自由とし、住むという定義も各自の設定によるものとします。
都市に居住するということは密度の高い空間になんらかの利便性を必要としているからですが、必然的に周囲にお膳立てされた状況があり、それをどう読み解いて、潜在的な可能性を顕在化させることが、狭小住宅に課せられた使命であり、楽しみでもあります。